第02話-8

・・グォォォォォォォォォウ・・・・・


月の暗い空に・・・地球を展望するその場所に、巨大な影はそびえ立っていた

ガーディアンほどの大きさはなくても、その「赤い影」の大きさは40メートル超、ゼファーの四倍以上!

両腕に巨大なツメ、がっちりとした全体のシルエット、大きく振り回した尻尾・・

まさに「恐竜」が、そのまま再臨したかのようなギアだった


『が・・ガンマっ!?』


ドーマはキャノンを放り出し、天高くそびえるその赤い恐竜を見上げている


『グゥゥゥゥゥ・・・・・・・』


ガンマの返答はなかった。

彼の声は聞こえず、ただそこにいた恐竜・・恐竜型のギアが吼えるだけ


「ふーん・・そーゆーことぉ。」

「ど、どないしたん?サクラはん・・?」


サクラはあの恐竜ギアを簡単に解析して・・微笑む


「ほら・・ここ「SPECIAL GUARDIAN GEARS G-D/88"DESTROY"」ってあるでしょ?」

「そ・・そのマーキングが・・何なん?」

「つまり・・あれはガーディアンよん、それもガンマちょんが乗って動かす、ギアタイプのねぇ~・・」


シードはテントの外へ向かうと、改めて恐竜型ギアを見上げる

相変わらず咆吼を続けるその機体は、よもすればこちらも襲われそうな・・そんな恐ろしい印象を受ける


『ガンマ・・!』


ロディは驚きながらも、ガーディアンへの攻撃の手は緩めない


『・・行きますよ、デストロイ』

『グォォォォォ!!!!』


ようやくガンマの声が聞こえ・・「デストロイ」と呼ばれた恐竜型ギアがもう一度、天に大きく吼える


・・ガーディアンたる我々の目的を忘れ、主である星を破壊しようなどとは言語道断なり!


『今ここで・・この場で貴様を「破壊」する!!』


・・ずずん・・・ずずん・・・

・・「デストロイ」はやや前屈みに、アークエンジェルを目指し走り始めた

尻尾を左右に振り、その鋭い目をぎらつかせ・・赤い機体は荒々しく疾走する


「すごい・・」


セラとネスは同時につぶやいた

何がなんだか、とにかくすごい・・


『ロディ様!少々どいてください!!』

『んわぁぁぁぁぁっ!?』


アークエンジェルに斬りかかっていたゼファーが、急いで上に飛び上がって逃げる

・・そのゼファーのいた位置に、デストロイが食らいつくように突っ込んだ!


・・ばきぃぃ・・・ん・・


ガラスが砕けるように、バリアはあっさりと崩壊してしまう


「じ・・実体・・それも体当たりで相干渉バリアを!?」

「信じられん・・」

「・・無茶苦茶よ」


説明を聞いていたS.G隊員たち、そしてリィズもその光景を見てしまっては言葉が出ない


デストロイは吼えながら、アークエンジェルの羽に食らいつく

・・エンジェル本体・・中央にあった小さな人型のそれがレーザーのようなものを放つが、デストロイの装甲はそれを歪めるかのように弾いてしまう


デストロイに語りかけるような動きをするアークエンジェルだが、デストロイがいっそう大きく吼えた時点でその本体が「叩き潰された」


・・「何故裏切った?」・・だと?・・・血迷った貴様に裏切り者と呼ばれるいわれは無い!!


ガンマはそう心の中で叫び、デストロイに名の通りの「破壊」を続けさせる

同じガーディアンであったアークエンジェルはもはや見る影もなく、引きちぎられ、かみ砕かれ・・・

まさに肉食恐竜に食い尽くされるがのごとく、バラバラになっていた


『・・全武装展開!』


・・これを最後にする・・!


『FULL BURST・DESTROID FANG!!』


がごんっ!


がきぃん・・!!


どん!


デストロイの肩、両足からはレールガン、背部からミサイルランチャーがせり上がり、両腕からはガトリングキャノン

ツメの付け根からはレーザー砲が現れ、頭部・腹部に収束砲らしきものが・・


とにかく、機体の全てが「武装」に包まれる


デストロイはかろうじて動いているアークエンジェルに組み付くと・・・

ゼロ距離で、密接した状態で・・・それらを一斉に放った


グゥゥゥォォォォォォ!!!!


実体弾が貫き、レーザーが焼き、デストロイの腕が全てを曲げ・・・全長100メートルはあったであろう機体は、粉々に粉砕された


・・ハズが、アークエンジェルの本体はまだ動いていた!

デストロイの頭部めがけて、飛びかかって・・

「一・刀・両・断ぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!」


デストロイの「目」を潰そうとした所を、上空から降ってきたゼファーのレーザーブレードに両断された


『ロディ様・・?』

『ちっ・・レーザーじゃしっかり切れねぇなぁ・・悪ィガンマ、そいつの掃除頼むわ』

『もとより了解しております・・!!』


ゼファーが素早く背後へ離脱したのを見届けて・・


デストロイは、アークエンジェルの残骸を力の限り空へ投げ飛ばす


両足からアンカーが大地に打ち込まれ、デストロイは口を大きく開けてアークエンジェルに照準を合わせる!


『ION DESTROID CANNON!!』


口へ・・正しくは口の中に設置された収束砲へ、光の粒子が集まっていく

臨界に達した粒子の流れは空へ伸び・・・


アークエンジェルというものの存在自体を、無に返した


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「・・結局なんなのよ・・」


リィズは半ば、あきれたような様子で言った

遺跡探検・・簡単といえば簡単だったはずが、いつの間にかトラップ破りしたり、当の遺跡を破壊したり

妙な最終兵器が出てきたり、挙句恐竜型ギアなんて時代錯誤もいいところの機体が出てきたり・・・

頭を抱える彼女が、唯一思う事は


「・・まぁいいか、「万事終わりよければ全てよし」、よ。」

「・・・・・」


多大な破壊の跡・・アークエンジェルの攻撃が地球に届いたのかも気になるし、月面第88遺跡はアークエンジェルの浮上で崩壊。

そしてデストロイが起こした大地の亀裂・・

・・今回の事をどうやって報告するつもりなのか?・・・ラルフは少なからず不安顔でいた


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・・この様子では、まだガーディアンは各地に存在しているようだな・・

・・いずれ・・出逢ったその時は・・


ガンマは空から舞ってくる光の雨を眺めながら、決意を新たにした


・・私には長らく待った主人も現れた・・それならば我が使命はただ一つ!・・


『おーし、撤収撤収。』


緊張感のないロディの声で、ガンマはそこから先を考えるのをやめた

デストロイを歩かせ、テントの前まで来る


「でっかいねぇ~・・・」


ドーマから降りたメイが、足下から機体を見上げる


「こんなおっきくて・・あのちーさいハンガーに入るんか??」

「ご心配なく、「彼」は呼べばどこでもやって参りますから」

「呼べばどこでも・・?」

「ダイターン3か、お前は」


・・肝心な時にワックスかけてて出撃不能なんて言い出すンじゃねーだろうな・・


バカな事を考えながら、ロディ達は撤収準備を始めた

リィズ達との雑談もあったようだが・・どうやら、今回ばかりは平和に物事を済ませられたようである


・・まぁ、破壊したのはガーディアンだったわけだし。

ロディの遺跡破壊の責任はいつの間にかうやむやになり、一同はそれぞれの帰路についた


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